ブドウ栽培はタイミングが全て(1)
2014年のハーベストは無事に終了。
10月15日現在, カリフォルニアの収穫はほぼ終了。旱魃が大きな心配になっているカリフォルニアだけど、北カリフォルニアは冬の終わりに降った雨のおかげで、旱魃の影響は受けていなく、ブドウの出来はかなりいい。
レタスなどを栽培するのと違って、基本的にブドウ樹は旱魃に強い。それに湿気がない分カビの付着の心配もなかった。
10月14日から2日間、雨が降った。例年だとこの時期に雨が降ったら、頭を抱えてしまうところなのだけれど、今年はブドウの発芽、生長が例年より早く、7月末から収穫が始まっていたので、雨の予報が出たことには90%のブドウの収穫が終わっていた。
この雨が貴腐菌付着の役に立つので、デザートワイン用のセミヨン種のブドウ畑では歓迎。
多少摘み残っていたカベルネやメルローは果皮が厚いので、2日間ほどの雨では(その後からっと晴れたので)ダメージは受けていない。
2012年、13年、14年と良い年が続いている。
ブドウを摘むタイミング
ブドウ栽培は、昔のように剪定が終了したら、スケジュールに沿って硫黄散布をして後は収穫のときを待つだけという簡単な作業ではなくなっている。栽培技術が素晴らしく進んだ今、剪定から始まって、摘葉、摘房、潅水等々、いろんな作業を1年中行う。
その目的は最高の状態で育ったぶどうを最高のタイミングで摘むためだ。タイミングが何かの理由で外れてしまうと、ワインになったときにいろんなマイナス面が生じる。
年によっては摘みたい時期に雨が降ってしまう。予報を基に雨の前に摘む、それとも雨の後に摘む、その決断が難しい。妥協して雨の前にまだ理想とする状態にブドウが熟していなくても摘まなければならない年もある。もう少し熟してから摘みたいと雨の後に摘むことにして待っていたら、予想以上のダメージを受けてワイン生産を断念、あるいは醸造責任者の首が飛んだ(極端なケースですが)という年もある。
摘む時期が早すぎたら、ワインの味わい(風味、アロマ、口当たり等を含む)に影響して、その畑から生まれるはずの良いワインの可能性が消えてしまう。
摘む時期が遅かったら、ブドウの皮が乾燥して縮れて、収穫量が減り(栽培農家にとって減収)、過熟ブドウの風味がワインに生まれる可能性が多くなるし、ブドウの酸が少ないために、ワイン生産の際に酸を加えなければならないかもしれない。
全ての醸造家のそれぞれがブドウのどの状態を熟した(摘みごろ)、まだ熟していないと決めるか、独自の基準をもっている。高級ワインを造る場合、一昔前のように酸度と糖度を測定して数字で摘む時を決める醸造家はまずいない。収穫時期が近づいたら、頻繁に畑の全体を歩きまわり、ブドウの口に入れて味の確認をする。
剪定から始まっていろんな作業をして育てたブドウの摘み時が、どんなワインになるのかに大きく罹っているのだから真剣勝負だ。
だからハーベストシーズンはエキサイティングでもあるし、神経ぴりぴりのときでもある。
ちなみに少し前まではハーベストシーズンをクラッシュと呼んでいた。最近はその言葉を聞かない。クラッシュというのは破砕という意味で、破砕をすることが少なくなったからだと思う。ブドウの粒にちょっと切り傷をつけるけれど、破砕(つぶしてしまう?)という荒っぽいブドウ処理は果皮からの苦味や渋みの滲出を避けるためにしなくなっている。
この写真のブドウ樹は病気っぽいです。数年内には多分引き抜かれて新しいブドウ樹が植えられてることと思います。