Lodi Native

新しいメッセージを発信するローダイ

ローダイ・ネイティヴのテイスティングとセミナーに行ってきました。

6ワイナリーと栽培農家が組んでローダイ栽培地区のジンファンデルのイメージを変えようと始めたプロジェクトです。

このプロジェクトに賛同した醸造家と栽培農家が出来上がったワインを提出してブラインドテイスティングで選ばれたのが6つのジンファンデル。6本とも同じラベルLodi Nativeでリリースされています。

ローダイ栽培地区は州都サクラメントの南に位置しています。11万エーカーという広大なブドウ畑があり、内陸なので温暖です。でも大き川があってその周辺は比較的涼しめです。1850年代からブドウが栽培されていた地区で全く新しい栽培地区というのではありません。多くのブドウ品種が植えられいて、今でも、100品種が栽培されているということです。最近では珍しい品種(例えばアルバリーニョ種、テンペラニーニョ種、ケルナー種、グラチアノ種、ヴェルメンティーノ種、ゲヴルツトラミーナ種等)が残っているのを見つけて主流じゃない品種でのワイン造りをする新しいタイプの醸造家たちが注目している地区でもあります。

なかでもジンファンデルは禁酒法前に植えられた台木が使われていない畑が2000エーカーもあるというのも特色です。

この20年間、カリフォルニアのワインは大きいことはいいことだとばかりに、リッチで、過熟気味でアルコール度の高いワインが高い点を得て、こでもか!といった感じで造られてきました。ローダイ栽培地区のジンファンデルも例外ではありません。ターリーのこの地区から造られたアルコール度が16%のジンファンデルに高い点がついて、高額で売られてたのを記憶してる方も多いかと思います。

1990年代にはビッグでジャミーでオーキー、甘く感じてしまうジンファンデルを造り、それが好みのファンもできましたが、行きすぎだとジンファンデルから離れていった人ファンも少なくありません。

またローダイ栽培地区のブドウは大手に売られて、大量生産用のワインの原料として使われていました。小さなワイナリーが個性を生かしたジンファンデルを造っていましたが、それは主流ではありません。

ローダイを中心に活躍しているワインライターであり、ローダイ・ワイン・アンバサダーでもあるランディ・カパロソ氏が中心となって、数人の醸造家とともに、樹齢のいったローダイ栽培地区のジンファンデルが本来持っている個性を表したジンファンデルを造ろうとこのプロジェクトを始めました。初ヴィンテージは2012年。

このプロジェクトに基づいたジンファンデルを造る主な条件をあげてみます。

  1. $1·        100%がローダイ栽培地区のジンファンデルで単一畑のブドウを使うこと。(例外は他の品種との混栽の古い畑)
  2. $1·        理想としては1962年前に植えられたもの
  3. $1·        自然酵母で発酵
  4. $1·        オークチップなど似た物質は使わないこと
  5. $1·        加酸、あるいは除酸をしないこと
  6. $1·        新樽、あるいは樽内に新オーク板を貼り付けた樽熟成はしないこと
  7. $1·        水を加えたりアルコールを抜いたりしないこと
  8. $1·        タンニンを加えないこと
  9. $1·        マロラックティック発酵のバクテリアを接種しないこと
  10. $1·        メガパープル、あるいは他の凝縮を目的としたものは使わないこと
  11. $1·        濾過、清澄作業はしないこと
  12. $1·        出来上がったワインはグループ全員で試飲すること
  13. $1·        ブドウ畑はローダイ地区のサステイナブル栽培の認知を受けている畑が望ましい

このルールを書いていて、えーっ、本当?これ全部守って、どんなワインが生まれるわけ?と私自身、戸惑いましたね。

このプロジェクトに参加する醸造家と栽培農家を見つけるのにはかなり苦労したらしいです。

加酸もしないし培養酵母も使わないというワイン造りに醸造家たちは怯えたと言います。

セミナーでMacchia Winseの醸造家は「ワイン造りに使えるいろんな技術を熟知してるのに、使っちゃいけないわけ?」とショックだったと笑いながら話してました。

で、ワインの味は?というと、なかなかのものでした。

全て 2013年のジンファンデルです。セミナーのティスティングリストにはブドウ畑の名前が最初に書かれていました。そして栽培家の名前と醸造家の名前も書かれています。栽培農家の理解と意欲と協力なくして、このプロジェクトの実行は不可能なのだから、当然ですね。でもここではワイナリーの名前を初めに書きます。じゃないと、混乱しそうだから。

Fields Family Wines “Stampede Vineyard”

透き通るように綺麗なベリーの味。ジューシー。美味しい酸味。長いフィニッシュ。軽やかでエレガント、バランスのとれたジンファンデル。アルコール度は13.9%

 Maley Brothers “Wegat Vineyard

1952年に植えられたジンファンデル樹。馴染みのあるジンファンデルの味わいで、少しだけジャミーだけれど、いい感じの酸味とコクのある黒チェリー。皮とか土を思わせる香り。アルコール度は14.9%

McCay Cellars “Trulux Vineyard

1940年代に植えられたジンファンデル樹。赤いフルーツの甘い香り。シナモンなどのスパイスと土の香り。これもまた美味しい酸の長いフィニッシュ。アルコール度は14.5%

St.Amant "Maria's Vineyard"

樹齢140年、ブラックベリー、スパイス、土の香り。口に含んだときに、ほんの少し薄い感じで凝縮感が少ないかなという感じ。フルーツの甘みと酸味の長いフィニッシュ。アルコール度は14.5%

Macchia wines “Schmiedt Ranch”

色がとても濃い。ブラックベリー、ブルーベリージャムの香り。ふくよかだけれど、ちょっとだけドタッと(笑)したイメージ。土の香りが強い方かな。アルコール度は15.9%

M2 Wines “Soucie Vineyard”

黒チェリーの香り。ビッグでパワフル。ふくよか。カラメルの味。美味しい酸の長いフィニッシュ。バランスのいいワイン。アルコール度は15%

各ワイナリーのこのプロジェクトの生産数は50−100ケース。それぞれの畑の個性が出ています。共通している味わいの特色は、土っぽいニュアンスで、スパイス風にも感じました。そしてピュアなベリー風味がどのワインにも感じられて、美味しく飲めるジンファンデルであるというのがいいです。

感想:

メッセージの発信に感動しました。ワインを試飲した後には、口の中にベリーの甘みが残ったのは事実です。同じような醸造法で酸味の効いた構成のいい素晴らしいジンファンデルを生産しているワイナリーは他にもあります。でもそれはそのワイナリーが独自で造っているものです。このプロジェクトはローダイ有志が、様々な発酵技術を捨てて、ローダイ栽培地区のピュアーなジンファンデルの味を証明して、ローダイのジンファンデルのイメージを変えよとしているのがユニークです。

このプロジェクトで利益を上げることはできません。この造り方、栽培をこの地区の他のワイナリーにメッセージとして送りたい、そしてワイン業界の人たち、いつかは消費者に理解してもらいたいと願って造っています。

このプロジェクトから、すでにさざ波が生じています。例えばターリートとかベッドロックなどのワイナリーが、この生産方法で生産を始め、ブドウを買い始めているとのこと。そうするとこの地区のブドウの価格が上がります。このメンバーは自分たちもその価格で買えばいい、ブドウ栽培農家にとってもいいことだといいます。それにワイン一本の価格も上がるけれど、それはこの地区のイメージアップにつながるからいいことなんだとしてました。消費者としては上がってほしくないけれどね、、。

栽培農家の方に「暑い年だと、どうするの?」ときいたら、「暑い年はチャレンジだね。でもレシピーはないんだ。そのときに対応するしかない」と爽やかな達観した笑顔で答えてくれました。

ランディはまだまだ消費者はジャミーでオークの味わいたっぷりのこの地区のジンファンデルを好む人が多いけれど、メディアやソムリエを通じて徐々に知ってもらえらばいいと話してました。

ローダイ栽培地区の醸造家や栽培農家の方達の静かな情熱と温かさ、ゆったりした態度が新鮮でした。

この地区のメッセージが伝わって、大きく羽ばたいてほしいものです。

ワインは6本入りセットで$180。まだ売り切れていなかったら、Lodi wine & Visitor Center のサイトからオーダーできます。