ナパの老舗ワイナリーのひとつJoseph Phelpsと、このワイナリーのボルドー系品種のブレンド、Insignia は、あまりにも有名で改めて報告する必要がないだろうと思います。
で、このワイナリーのもう一つのワイナリー、Freestone を訪れてみました。
ソノマ・コーストでピノとシャルドネを造ろうと約40ヘクタールという土地を買ったのは1999年のことです。あのひどく涼しい土地(当時はそういう評価でした)で、ワインを造ろうとしたワイナリーの先駆者でもあります。畑は太平洋沿岸から約13kmしか離れていない土地です。2000年にブドウ樹を植えました。
その当時、あまりに涼しすぎてブドウが熟さないという話を耳にしたものです。私は、内心、もしかして失敗?と、ふと思ったりしました。
その後、栽培技術の進歩、クローン選択、台木の選択を改めて行い、2007年まで徐々に植え替えていきました。そして2012年、2013年は温暖な気候だったこともあって、しっかりと綺麗に熟したピノとシャルドネを生産していました。
2007年にこの地区に新しいワイナリーも建築、成功街道を進んでいます。
ブドウ畑はPastorale Vineyard とQuarter Moon Vineyardに分かれていて、栽培面積の80%がピノ・ノワール種です。
発芽は2月末、収穫は10月末までと、生育期間が長いので、ブドウはゆっくりと熟し、豊かな味わいが加わっていきます。と同時に涼しいので、自然の酸がきちんと残ります。
土質はこの辺りに多いGoldridge という土壌で、水はけが良く、痩せた土であることから、高品質のシャルドネ種とピノ・ノワール種の栽培に適しているとされています。500万年前に海底が隆起したもので、キメの細かい砂とローム質の土壌に砂岩が混じっています。
Pastorale Vineyard
太平洋から13km内陸に入ったところにあり、ロシアン・リヴァー・ヴァレーの端っこに位置している畑。霧と海風の影響を受ける涼しい土地にあります。長所は生育期間が長いこと。
Quarter Moon Vineyard
南斜面(場所によっては傾斜度が50%)に面していて、高いところで標高152m、霧の上に位置しています。太平洋から8km離れています。高地にあることから太陽光線を多く浴びるのが特色です。
2013年 Pinot Noir Freestone Vineyards $55
上の二つのブドウ畑のピノをブレンド。新樽の使用率は33%。自然酵母。約20%が全房。フルーティ、なめし皮、チェリーキャンデー。滑らか。柑橘類系の美味しい酸味。洗練されたコクのあるタイプのピノ。過熟味がなく、熟知した造り手の意図が明確に表現されたピノ。この地区のピノにしてはスケールが大きい。シルキーな口当たりが印象的。
2012年 Pinot Noir Quarter Moon Vineyard $75
焦点がきちんと決まっている。スパイシーでありながらふくよかさを持ち合わせている。バランスがいい。このタイプのワインとして完結している。理屈なしに美味しい。
アルコール度13.8%
2012年 Pinot Noir Pastorale Vineyard $75
華やかな香り。しなやかで涼しげな味わい。プリティなピノ。
アルコール度13.9%
2012年 Insignia $240
よく熟した甘いフルーツ。ベルベットのような口当たり。滑らかなタンニン。綺麗な酸。空気に触れさせてから再度飲んでみたら、華やかなバイオレットの香りとダークフルーツの香りがきれいに立ち上がってきました。エレガント。まだとっても若い。長く熟成したら、確実に素晴らしいワインになるでしょう。
2012年 Cabernet Sauvignon, Backus Vineyard$250
カリン、ラベンダー、ほんの少しのレーズン香。パーカーが大好きな一斉を風靡したよく熟したタイプのカベルネ。でも決して重くない。このタイプのカベルネファンにとってはたまらないでしょうね。一緒に行った友人はその美味しさにため息をついてました。
ソノマコーストのピノの試飲に訪れたのですが、本家?のワインも試飲できたのは嬉しい喜びでした。
IPOBとは一線を画したタイプのピノを、きっちりとこれが我が社のスタイルと確信を持って生産しているなあと敬服。そしてワインの質はどれも素晴らしい。
ただ、どのワインも安くない!ですねえ。