今、カリフォルニアのピノが熱い。
一昔前にカリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨンが品質の向上と畑の個性を生かした、カリフォルニアならではのカベルネ造りに情熱を傾けていたころを思い出す。今、ピノの生産者たちは、栽培条件と醸造法に敏感に反応するピノを相手に、一歩一歩、カリフォルニアの秀逸なピノを造ろうとしている。
メジャーのワイン誌は、色が濃くて、過熟気味のブドウから、こってりタイプのほとんどシラーかと思ってしまうパワフルなピノに高い点をつけていた。現在、少しずつ、その傾向から振り子が戻ってピノらしさを表現するバランスの取れたピノを造り始めている
「カリフォルニアのピノ・ノワールのバランスを追究」
このタイトルで3月28日にRN74というワインバーで試飲会が開かれた。Michael Minaと RN74のワイン・ディレクターである Rajat Parr 氏と Hirsch Vineyards の Jasmine Hirschさんが主催したもの。
目的はプレス、トレードの人に、こういうタイプのピノがあることを知らせて、ワイナリーにコンタクトするように、消費者はほとんどが小さなワイナリーなのでのメイリングリストに加入するようにというメッセージ。それからレストランへ行ったら、今回参加しているワイナリーのピノがリストに載っているか、ワインショップにいったら、扱っているか、気をつけてチェックしてほしいと明確。
主催者からのメッセージ:
ピノ・ノワールのバランスとは、そしてなぜそれが大切か?
全てのワインの基本はバランスだ。バランスがとれたワインとは、大雑把に言うと、フルーツ、酸味、構成、アルコールといったさまざまな要素が共存しているワインといえようか。ワインのさまざまな要素のどれかひとつだけが突き出ている、あるいはひとつの要素が少ないといと、ワインの基本的な自然の姿が変わってしまう。
非凡なピノはデリケートで釣り合いが取れていて優美で、ブドウが育った土壌、気候を明確に反映している。バランスの取れたピノはこれらの特徴が最高の形で表現され、どの要素のひとつも優勢になっていない。
このイベントの意図はバランスの取れた深みのあるカリフォルニアのピノを生産できる可能性を信じる栽培農家、醸造家、ソムリエ、リーテーラー、ジャーナリスト、消費者が集まること。
このイベントは造反ではなく、むしろ信じる人たちの集まりだ。このテイスティングに出されているワインそのものがその意味を伝えてくれるだろう。カリフォルニアのピノのバランスについて話し合う土台として企画した。バランスの取れたピノ造るためには何をすべきか?
24の参加ワイナリーの中で印象に残ったワイナリーとワインをあげてみた。。人混みをかき分けての試飲だったので、試飲できなかったワイナリーも2,3ある。
Au Bon Climat
2009 Le Bon Climat –K&U, Santa Maria Valley
2008 Isabelle California
2007 Clendeneb Family Vineyards, Le Bon Climat Santa Maria Valley
Calera
2007 Jensen Vineyard, Mt.Harlan
2007 Ryan Vineyard, Mt. Harlan
2009 Central Coast
Ceritas
2008 Escarpa Vineyard, Sonoma Coast
2008 Escarpa Vineyard, Sonoma Coast
Cobb Wines
2008 Coastlands Vineyard, Sonoma Coast
2008 Diane Cobb Vineyard, Sonoma Coast
2007 Emmaline Vineyard, Sonoma Coast
Hirsch Vineyards
2009 Hirsch Vineyards”Reserve”, Sonoma Coast Barrel Sample
Kutch
2009 Anderson Valley
2009 Falstaff, Sonoma Coast
2009Mcdougall Ranch, Sonoma Coast
Licco
2009 Hirsch Vineyard, Sonoma Coast
2007 Michaud Vineyard, Chalone
Native 9
2009 Rancho Ontiveros Vineyard, Santa Maria Valley
Peay
2009 Peay Vineyards, Sonoma Coast
2009 Ama Estate, Sonoma Coast
2009 Pomarium Estate, Sonoma Coast
Sandhi Wines
ELV Tempest, Santa Rita Hills
Tyler Winery
2008 Clos Pepe, Santa Rita Hills
2008 Precidio, Santa Barbara County
消費者、ジャーナリスト、トレードの誰もが参加できるというユニークなイベント。広いバーだけれど、テイスティングには狭い上に、興味深いテーマの試飲会のであることから、ラッシュアワーのような混み具合。トップクラスのジャーナリストやソムリエも多く参加していた。
混んでいるので身動きが取れない。そしてようやくテーブルの前までたどり着いても、このときとばかりと自分を見せ付けるコンテストみたいに、ワイナリーのテーブルの前にへばりついて、ああでもない、こうでもないと、会話を続ける参加者が多くて、なかなか注いでもらえない。友人のライターはうんざりして、さっさと帰ってしまった。同じくソノマから来ていた、ソムリエ兼ライターのクリスは「不可思議な試飲会だね、こんなの始めてだよ」と汗をかきながら、お互いに肩を斜めにずらして逆方向にすり抜けた。
でもとてもユニークな試飲会だった。ブルゴーニュの赤とはもちろん違うけれど、確かにカリフォルニアのピノとして、エレガントでバランスが取れたものが選ばれていた。参加ワイナリーの醸造家かもしくはオーナーが自らワインを注いでいたのも、ユニーク。そして言うまでもなくシラーみたいなピノはなかった。
多くのワイナリーが少量生産の小さなワイナリーで、メイリングリストに加入しなければ手に入らないワインが多い。
この小さなワイナリーが数年後にはカリフォルニアのピノ・ノワールのスタイルを変えていく動きを作るのかもしれない。