No. 27-3 Date:2007-03-13
1月初旬にサンフランシスコで25周年を記念してヴァーティカル・テイスティングが開かれた。1981年から2006年まで試飲できる最初で最後のチャンスかもしれないと喜び勇んで出かけた。
(★(good)、★★(better)、★★★(great) の3段階で評価しました。)
★★★ 1981年
程よい熟成香。こなれた酸味。まだフルーティさが残っているので驚いた。長いフィニッシュ。
パトリックのメモ: 収穫は9月5-28日。比較的良かった年。
★ 1982年
81年より熟成香が強い。口当たりが軽やか。衰えが出掛かっている。今飲んだほうがいい。
パトリックのメモ: 収穫は10月11-20日と遅かった。ブドウは理想的に熟成しなかった。
★ 1983年(マグナム)
ローレル・グレンらしい香りがない。少しの苦味が感じられる。
パトリックのメモ: 収穫は9月21日ー10月14日。非常に難しい年だった。
★★★ 1984年(マグナム)
前の3ヴィンテージよりパワーが感じられ、まだ若い!と思わせるほど。口に含んだとき(ミドル)の味わいがおいしく、フィニッシュも素晴らしい。
パトリックのメモ: 収穫は9月6-18日。前の3年でベストの年。理想的な天候状態の中でブドウが熟した。
★★ 1985年(マグナム)
華やかな香り。滑らかな口当たり。しなやかでエレガント。
パトリックのメモ: 収穫は9月18-26日。カリフォルニアの伝説的な年。
★★★ 1986年
深い香り。凝縮した味わい。フレームがしっかりしている。味の焦点が定まっていて、上品でありながら芯がある。
パトリックのメモ: 収穫は10月1-3日。1980年代中ごろでは自分が好きなワイン。
★ 1987年
色が濃くブラウンシュガーの香り。口当たりは滑らか。フルーツ味がやや欠けているので驚いた。
パトリックのメモ: 収穫は9月17-20日。このヴィンテージは専門家たちによって過大評価されていると常に思っていた。「ブドウに1985年と86年のような凝縮味はない」とセラーノートに記載してある。
★ 1988年
甘い香り。ローレルグレンとしては珍しいライプしたブドウの香り。味わいはフルーツより干草の味わいのほうが印象に残った。フィニッシュは少し短め。
パトリックのメモ: 収穫は10月3-12日。とても難しい年だった。そのためにカウンター・ポイントとローレル・グレンの2つのラベルで出すことに決定。その結果ローレル・グレンのラベルで瓶詰めしたのはそれまでの3000ケースから800ケースと激減した。ローレル・グレンのラベルのワインは、このヴィンテージのワインの中で高い評価を受けた。「開花時期の天候のせいで今まで出最も収穫量が少ない。涼しく熟するのに、時間がかかった。1房の中でも熟し具合がまばら。いつ摘んだらいいのか、決定するのが困難。粒が乾燥しているのもある」とセラーノートに記載されている。
★ 1989年
干草の香り。フルーツ味は欠けている。スケールが小さめのワイン。食べ物と一緒だと大丈夫。
パトリックのメモ: 収穫は10月8-12日。収穫時期中雨降りが続いた。2年続いての難しい年だった。
★★★ 1990年(リザーブのマグナム)
良い年のローレル・グレンのカベルネに生まれる墨汁と黒系フルーツとスパイスをミックスした香が焦点が定まってきれいに出ている。味わいが凝縮していて、しかも口当たり(ミドル)がとてもしなやか。フィニッシュはとても長い。まだ生き生きとしていて若さを感じさせる。
パトリックのメモ: 収穫は9月21日ー10月2日。素晴らしいヴィンテージ。生育期間中、何の問題も生じなく、バランスと熟し具合が理想的だった。
★★ 1991年
干草の香り。少し熟成香。口当たり(ミドル)は軽やかでしなやか。程よいフルーツの甘味から酸味へと続く上品で長い日フィニッシュ。
パトリックのメモ: 収穫は10月14-21日。涼しく生長期間が長い年。十分にブドウが成熟したが、90年の質には及ばなかった。この年、多くの刷新的な醸造家が樽熟成中にブレッタノマイセスの存在を認めても強いろ過を避けた。これは誤りだった。ブレッタノマセスは出来上がったワインのなかで生き延びていた。今、考えると驚くに値しない。
★★★ 1992年
カシス、黒系フルーツの深い香り。凝縮感が素晴らしい。口に含むとクールな感覚なのだが、味わいがびっしり詰まっている。
パトリックのメモ: 収穫は9月19-28日。カリフォルニアの偉大なヴィンテージのひとつ。収穫前の天候はパーフェクトだった。素晴らしいブドウの成熟。糖度は例年より高くなっていた。
★★ 1993年
赤系フルーツ。ほんの少しの熟成香。口当たりがしなやかでシルクのように滑らか。甘味を含んだ酸味の長いフィニッシュ。
パトリックのメモ: 収穫は9月29日ー10月11日。涼しい年でブドウに少しの青みが感じられ、これが消えるのに長い時間が必要だった。
★★★ 1994年
華やかなフルーツとスパイスと墨汁がミックスした香り。軽やかでシルキー。美味しさが口の中に広がる。エレガント。
パトリックのメモ: 収穫は10月3-15日。グレートな年。90年代は99年は例外として、偶数の年が良いヴィンテージのようだ。
★ 1995年
ローレン・グレンらしい黒系フルーツとスパイスと墨汁がミックスした深い香り。口の中はクールな感触と黒系フルーツ。タンニンがしっかりしているので、こなれるのにまだ時間がかかりそう。
パトリックのメモ: 収穫は10月7-15日。ワインが熟成するのに長い時間がかかった。初めはサン・テステフを想わせるような堅いタンニンだった。
★★★ 1996年
焦点の定まった深いカシスと墨汁の香り。口の中にこくとエレガントさとパワーと程よいフルーツの甘さとおいしい酸味が広がる。若いけれど美味しく飲める。ノートに「いいな!」と思わず書いてしまった。
パトリックのメモ: 収穫は9月12-28日。熟成するのに10年かかったがいいワインになった。
★★ 1997年
ブラウンシュガーの香り。飲み心地の良いワイン。決して悪いワインではないけれど、ローレル・グレンにしてはややシンプル。
パトリックのメモ: 収穫は9月5-16日。プレスが過大評価したもうひとつのヴィンテージだと思う。
★ 1998年
干草の、ハーブとフルーツの甘い香り。口当たりはとてもシルキー。甘味と酸味の長いフィニッシュ。今、飲んだほうがいいかも。全体のバランス、ローレル・グレンらしいスタイルに欠けるかも。
パトリックのメモ: 収穫は10月22-29日。今までで一番遅くまで収穫を待った年。醸造家の忍耐が試された年。「ブロックによってブドウの房の熟し具合に非常にばらつきがあった。あるブロックはまだ未熟、あるブロックは完璧に熟している。ブドウ樹の葉の50%が黄色になった。もうこれ以上待てない状態になった」とセラーノートの書かれている。
★★★ 1999年
焦点が定まった凝縮したスパイスと黒フルーツ墨汁の香り。フルーツの程よい甘味が長いフィニッシュに続く。力強いワイン。どのように熟成するか、もっと置いていておきたいワイン。私はナパのもソノマのも、1999年のカベルネがいいと常に思ってきた。
パトリックのメモ: 収穫は10月14-22日。素晴らしい年だった。良い時期にインディアンサマーがやってきた。この年が酸度に注意を払って摘んだ最初の年。糖度が上がっても酸度とのバランスが取れるまで摘むのを待った。その結果糖度は24.4度ブリックスになっていた。
★ 2000年
甘いフルーツの香り。しなやかできれいなワイン。凝縮度にちょっと欠けるかもしれないけれど飲みやすくて美味しい。上品でバランスがいい。
パトリックのメモ: 収穫は10月15-25日。悪くはない年でプリティなワインが生まれた。「糖度が低い時点で摘む年かもしれない。収穫時期に気温が低く、少し雨が降った」とセラーノートに記載。
★★★ 2001年
黒系フルーツとスパイシーな香り。高い凝縮度。今までのローレル・グレンと多少、ニュアンスが違って、もう少しライプな果実風味と香りを感じる。
パトリックのメモ: 収穫は9月17-26日。グレートなヴィンテージ。エレガントでリッチなスタイルのワインに仕上がった。平均の糖度は24.6度ブリックス。「ブドウはパーフェクトな状態だ。どのブロックも平均に熟していて、未熟な青っぽさがゼロ」とセラーノートに記載。
★★★ 2002年
程よく熟した黒系フルーツと墨汁、スパイスがミックスした複雑みのある深いの香り。パワフル。口に含むと口当たりがシルキーでしかもエレガントだった。
パトリックのメモ: 収穫は9月17-26日。グレートナ・ヴィンテージ。「ブドウ樹の葉は乾燥して落ちた。完全に成熟している。大きな可能性」とセラーノートに記載。
★★ 2003年
香りは控えめで赤系フルーツ。
パトリックのメモ: 収穫は9月21-29日。良い年。セラーでのロットの厳選をしなければならなかった年で、その結果、ローレル・グレンのラベルの生産量は非常に少なくなった。
★★★ 2004年
フルーティでしなやかな。シルキーな口当たり。フルーツの味わいが口の中に広がる。
パトリックのメモ: 収穫は9月9-21日。素晴らしい年。糖度が高く完熟。素晴らしいバランス。
★★★ 2005年(樽からのサンプル)
今風にライプスタイルなのだけれど、決して過熟ではなくエレガント。
パトリックのメモ: 収穫は10月6-20日。涼しい年だったが、なかなか良い出来。バランスがよく複雑味がある。
★★★ 2006年(樽からのサンプル)
香りはまだ控えめ。口の中にクールな感触。上品でよくまとまっている。
パトリックのメモ: 収穫は9月9-21日。今世紀ベストのヴィンテージかもしれない。
感想:
どのワインもピークを越えているというのがないのに、まず驚いた。今、飲んだほういがいいというのはあっても、まだフルーツがきちんと息づいていた。ありがたかったのはこれだけの数を試飲しても舌に甘ったるさが残らないという点だ。ゲストの会話が耳に入った。「非常にヨーロピアン(ヨーロッパ風の)なワインだ」とささやきあっていた。ワインも口当たりがとてもシルキーなのが共通していた。
2000年からスタイルに変化が見られた。もうすこしライプなのだ。それでも決して過熟ではなく、酸味がきちんと残っているので、きれいに熟成するだろう。古いヴィンテージの引き締まったスタイルからフルーティさが前面に出たスタイルになっても、ソノマ・マウンテンのブドウの個性が明確に表現されていて、バックボーンに酸味がきちんとあり、バランスの取れたワインであることに変化はなかった。今後どのように熟成していくのか非常に興味がありかつ楽しみだ。
ナパのカベルネも含めて私は1999年のヴィンテージがいいと思ってきたけれど、99年が良かった。
簡潔な歴史
ローレル・グレンのブドウ畑は既に1800年代にブドウが植えられていた。近代的な畑に植え替えたのは1968年のこと。栽培したブドウは1980年までソノマ・ヴァレーのワイナリー(シャトー・セント・ジーンを含む)に売っていた。1981年からローレル・グレンのラベルで自社畑のブドウを使ってワインの生産を始めた。1988年にローレル・グレン(長期熟成に向くワイン)とカウンター・ポイント(若くても楽しく飲めるワイン)の二つのラベルでワインを出した。