No.47 AVA名はセールスに好影響?

No. 47   Date:2010-9-26

AVA名はセールスに好影響?

答えはイエス&ノー。ある調査会社が調べた結果だ。

次のような状況だとイエス。

AVA(アメリカンブドウ栽培地区)として高い品質のワインを生産、しかも高額ワインを生産し始めた地区は、ラベルにそのAVA名を書くことによって売上げに好影響が出る。AVA地区のワイナリーが高品質のワインを生産してなければ、さして価値はない。品質の良いワインがAVA地区から産出されれば、消費者はその地区名に関心を払う。

カリフォルニアワインというとナパと思う人が大半だから、ナパ・ヴァレーというAVAはセールスに大きく影響する。

ナパ・ヴァレーの北端部にあるカリストーガという地区がナパ・ヴァレーのサブAVAの申請をしようとした。AVA記載の規則に「AVA名をラベルに記載するには、最低85%記載栽培地区で栽培されたブドウを使わなければならない」とある。カリストーガ・セラーとカリストーガ・エステート・ヴィンヤードの二つのワイナリーはあわてた。この2つのワイナリーは実はカリストーガ地区で栽培されたブドウを使っていないからだ。2つのワイナリーがサブAVA申請反対の声をあげて、もめたすえ、AVA認定の管轄事務所であるTTBが、3年以内にワイナリーの名前を変えるか、85%以上カリストーガ地区のブドウを使うことという仲裁案を出して、ようやくカリストーガがナパ・ヴァレーのサブAVAとして認定になった。2004年に申請して2009年に認定。4年間かかっている。

 

ナパ・ヴァレーはナパ・ヴァレーで栽培されたブドウを使用していないワイナリーがナパの名前をラベルに使わないことという申し出を最高裁を通して勝ち取っている。またソノマ・カウンティという名前を保護する規則がカリフォルニア州で制定されている。

消費者がブドウ品種、栽培地区、ワイナリー名で混乱しないでワインを選べることが理想的だから、ナパとソノマの動きは納得。

 

高額ワインになると消費者は栽培地区とワイナリーの評価をチェックしている。

その例としてサンタ・ルシア・ハイランドがある。ピゾニ・ヴィンヤードのゲリー・ピゾニ氏がモントレー・カウンティのサブAVAとしてサンタ・ルシア・ハイランドを申請して認可された。一般的にはモントレー・カウンティのほうが名前がいきわたっているけれど、品質の良いピノ・ノワールにはモントレー・カウンティ、さらにサンタ・ルシア・ハイランドと記載すると効果があるという。

もうひとつの例にソノマ・コーストがある。本来、もともとソノマコーストは大手が栽培地区をラベルに記載するために広大な地区をAVAとして申請。ほぼソノマ・カウンティの海岸沿いがこの地区に入る。だからソノマ・コーストと記載されていても、正確にはどこなのかよくわからない。でもAVAなのだから、品質の高いワインが生産されていそうというイメージが狙いだった。

それが、今はソノマ・コーストの非常に涼しい畑からきれいな高品質のピノ・ノワールが産出され始めて、ソノマ・コーストの高いイメージが定着。最近、そのイメージに乗っかって、ときどく、えっ、ここもソノマ・コースト?って思う畑も、ソノマコーストの地区名を使っているのを目にする。でももともとが広い地区なのだから、規則違反ではないのだ。

あるワイナリーはソノマ・コーストとロシアン・リヴァーに位置しているので、どちらの栽培地区名を記載してもいいわけで、冗談半分でソノマ・コーストとロシアン・リヴァーと半分ずつラベルをはろうかと思っているといっていた。ソノマ・コーストをまだ良く知らない人はロシアン・リヴァーを買うだろうし、ソノマ・コ-ストのピノに関心を持つ人はソノマ・コーストとラベルに記載しているほうを買うからだ。

ノーの部分は次のようになる。AVAのシステムは全米に使われている。アメリカ全州でワインが生産されている現在、例えばアーカンサス・マウンテンという広大な(28万エーカー)のAVAが1986年に公認されている。もしそのボトルを目にすることがあったとしても、どんなワインかそしてその品質も予測がつかない。これらの州のAVAが記載されていてもワインのセールにはつながらないという意味ではノーなのだ。オレゴン、ワシントン州、カリフォルニア以外の州のAVAからいいワインが出て全米で注目されるまでには、まだ時間がかかるだろう。今、ニューヨーク州のフィンガー・レークとロング・アイランドのAVAが東海岸で注目を集めだしている。

 

★AVA:American Viticultural Areaの頭文字をとったもの。政府が公認したブドウ栽培地区。フランスのAOCシステムとは違う。