選挙の投票に11時間並んだというのは極端な例ですが、アメリカの激戦地(共和党が強い州)では、期日前投票に投票者たちは数時間並んでると報道されています。

日本の選挙で、長時間並んだというケースはないですよね。私は、あまりに長い列だったら、投票しないで帰ってしまうかもしれません。

長い列を辛抱強く待っている投票者の多くがアフリカ系アメリカ人です。

アフリカ系アメリカ人差別で有名なジョージア州では投票会場がオープンになる前に、多くの人が並んでいたそうです。有権者抑圧の長い歴史があるジョージア州では、長ーい列を作って何時間も待っても投票をするというのは、この選挙だけではありません。中西部、南部の共和党が強い州、例えばオハイオ州とかヴァージニア州も同じです。

共和党が主導権を握ってきた州は、有権者の抑圧(アフリカ系アメリカ人)を様々な形で行ってきた長い歴史があります。その抑圧を跳ね返して何時間かかっても投票するという決意に心打たれます。

「投票に魂を」のスローガンがブラックコミュニティのスローガンとしてツイートされています。

ジョージア州アトランタ市の黒人女性市長は、黒人差別反対に一生をささげた議員、今年の7月にがんで亡くなってしまったジョン・ルイス議員の言葉「投票は我々が持っている最もパワフルな非暴力の道具だ」という言葉をツイートしています。

今回の選挙では、アフリカ系アメリカ人に加えて低所得者層の人たちが、例年よりもずうっと多く、期日前投票に長い列を作って投票しています。コロナ感染を避けるために、11月3日の選挙日の混乱を避けて、なるべく混んでいないときに投票しようという意思です。

今回の選挙の期日前投票の長い列は、有権者の熱意を示しているということに加えて、投票を抑圧するために意図的に複雑に設置されたプロセスの結果でもあります。

私は10月20日に郵便局に予め郵送されていた投票用紙を投函してきました。

アメリカの投票日は11月3日ですが、オーソドックスに投票日に投票するのに加えて、期日前に投票する方法を選ぶことができます。

1.投票日前に郵便で送る。

2.期日前に設置されている投票用紙投函ボックスに入れる。

3.期日前投票をする。(州によって設定された日が違いますが、選挙当日と同じように投票場へ行って投票します)。

ちなみにアメリカでは投票用紙を受け取るためには登録しなければなりません。カリフォルニア州は民主党支持か、共和党支持か、独立か、を記載しなければなりません。これも州によって違うのです。細かい選挙システムは、州、さらに管轄地区が決めるという、本当に複雑な国です。

コロナウイルスの感染を避けるために特にカリフォルニアは郵便で投票することを進めています。これも州によって違うんですよね。

大統領とか議員候補者に印をつけるのは簡単なんだけど、カリフォルニアのproposition(私訳:規則の提案)が12,私が住むソノマの地区では local ballot measure(私訳:地方の投票による法案)が3あって、賛成か不賛成かを表記しなければなりません。TVで賛成派、反対派のCMが流れるのですが、判断が難しいです。法案の説明をした小冊子が送られてきます。カリフォルニアはとっても親切で、英語のほかに私の場合は日本語の小冊子も送られてきました。でも日本語のほうが難しいのです(苦笑)。英語も、娘曰く「弁護士でなきゃわかりにくいよね」というくらい、完全に読み込もうとすると難しいです。新聞の意見、「規則のサポートはどんな組織がしているのかを見るように」という娘のアドバイスで、なんとか理解できたかと思います。日本語はpropositionは州民発案法案と訳されていて、言い回しがややこしくて油が切れ始めている私の脳みそには、ピンと入ってこなくて、読むのを諦めました(涙)。

今年はコロナウイルス感染を避けるために郵便による投票を民主党は奨励しました。郵便による投票だと投票場まで行く車がない人や働いていて時間が取れない人などの多くは民主党に投票します。すると裕福な白人が対象の共和党は不利になります。歴史上、いろんな形で選挙の抑圧をして共和党支持州(レッドステート)として守ってきたのが、危うくなります。郵便による投票だと投票抑圧が困難です。いろんな方法で投票するのをくじけさせようとしていますが、例えばテキサス州では投函ボックスを民主党支持者が多い広大な管理地区に一個しか設置しないと州知事が決めたり、他州では郵便箱を年除いてしまったりと、あまりにもあからさまなので啞然としてしまいました。

レッドステートの様々な投票抑圧対策に反対して民主党が裁判所に訴える、民主党の選挙権を守る提案に共和党が反対して裁判所に訴える、そして控訴と、訴訟合戦が繰り広げられています。

日本も選挙汚染がありますが、こんなに複雑ではないですよね。

日本でも報道されてるかと思いますが、トランプ大統領が選挙制度の正当性を疑わせようと、いろんな発言や策略をしてます。アメリカの有権者は何とかして自分の一票が有効になる投票方法を模索していて、その現象の一つとしてコロナ感染を覚悟で期日前投票を選んでいるのだと思います。

すごい決意ですが、決して暗いムードではなくて、ボランティアが「デモクラシーをおいしくするピザ」と銘打って、並んでいる人たちにフリーで、ピザを配達している地区もあります。

今回の選挙では期日前投票者が圧倒的に多くて、5000万人がすでに投票したと報道されています。

11月3日前後に異常事態が起こらずに、選挙が無事に終わることを祈るばかりです。