イタリアの小さなワイナリー

イタリアの小さなワイナリー

7月中旬、30度を超える暑い日だった。ソノマの太陽に負けない強い日差し。ベルギーのワインインポーターで長年の友人でもあるマークがOasi degli Angeli wine estateというワイナリーに連れて行ってくれた。

「カルトワインを造ってるワイナリーだよ」とだけ言った。

住所の標識なし。ここか、いや、ここじゃないと数度行ったり来たりする。「いつも苦労するんだよ、ここへ来るのに」とマーク。

鉄製の豪華なゲートがあるところで、「ここってワイナリー風だよ、ここじゃないかな」と私と相棒。

「おっ、前はゲートなんかなかったのに、、、儲かってるんだなあ!どうやって開けるんだ、、、」とマーク

「四角いボックスがあるはずだからそれを見つけてボタンを押したらいいよ」と相棒。ナパのワイナリーで一般化してる豪華版ゲートの開け方を教えてる(笑)

オーナー兼醸造家のマルコがゆったりした様子で迎えてくれる。ちょっとヒッピー風で小柄。眼鏡の奥の大きな黒い目が印象的。

マルコの奥さんのエレノラの曽祖父がブドウ、オリーブ、果樹、野菜を栽培する農園を開拓した。エレノラに出会ったマルコは、1990年代にこの敷地にワイナリーを設立し、ワイン用ブドウの栽培も始めた。

「玉の輿(男性の場合もそういうんだっけ?)だね」的なことを、ぽろりといったら、「永久に働き続けることになっちまった労働の奴隷」とにやり。 

このワイナリーがある地区はイタリアの中東部アドリア海がすぐ近くにあるマルケという地区。

ワイナリーの建物のすぐそばにある畑に連れて行ってくださった。

葉がふさふさと茂って元気そう。密植率が高く、古い畑は1haに7000本、新しい畑は13000本、15000本、22000本とすごい混みようだ。ブドウ樹一本に付き2房。石ころがたくさんの畑は根が深く張るそうだ。オーガニックとかバイオダイナミックで栽培してるのかと聞いたら、どちらの畑も科学物質を使った肥料や殺虫剤、除草剤は使ってなくて、オーガニックとかバイオとかいわずに、畑の様子に応じて手入れをするのだという。

セラーは清潔で、見慣れたセラー。ただ壁が赤い綺麗なタイルっていうのが、初めて。卵型のコンクリートタンクもある。

いつもはレストランに使うというさして大きくない部屋で試飲。

2011 Kupra

濃いタイプのグルナッシュ。こなれたタンニンがたっぷり。よく熟している。パワーと深みが両立。ダークチェリー。今までのイタリアワインのイメージ、それにグルナッシュのイメージと違って、驚いたけれど、口当たりは滑らかでバランスがいい。説得力のあるワイン。アルコール度は15%。生産量が少ないので、1本で200ドルと高い。 パーカーの評価も高いようだ。

ここで彼は自家製のパンをお皿に盛ってテーブルにのせて、濃い緑色のオリーブオイルをさささっとパンの上にかけた。

「こんなに濃い色をしたオリーブオイルは初めて見た」と私。

「まだ緑のオリーブを摘んで作ったら緑色になるよ」とマルコ。

なんでそんな簡単なことを聞くの?と顔に書かないように努力してるのがわかって、肩をすぼめる。

勉強が足りないなあ。これは2013年のものだけれど、2012年はこんな感じですよと言って、別に注いでくれた。どちらも白胡椒の味と完熟前の梨の香り。フレッシュでコクのあるオリーブオイルの味と香りを頭に叩き込む。

これをかけた焼きたてのパンはバターのようにコクがあって美味しい。オリーブの木は3000本あるそうだ。

          

次にこれまた自家製のサラミ、そして生ハム、自家農園のメロンをさりげなくテーブルにのせてくれた

2011年Kurni

モンテプルチャーノ種から造られたワイン。モンテプルチャーノっていうのは、トスカーナの有名な町の名前でもあって、一瞬、知人のロベルトの結婚式に訪れたあのトスカーナの町と混乱した私にマークが「ノーノーノー」と焦ってた。

モンテプルチャーノ種はイタリア中東部のアブルッツオとかマルケ地区で栽培されているそうだ。だいたいがフレンドリー価格のワインとして生産されているのだけれど、このワイナリーではこの品種から高級ワインを造ることにチャレンジして成功。

こちらもライプでリッチ。口当たりはシルキー。プラム、ブラックチェリー、エスプレッソ、ブラックベリージャム。

モダンなインターナショナルスタイルの赤。アルコール度は15%。イタリアワインって枠を作っちゃいけないけれど、一般的にイメージする(あるいは代表的な)イタリアワインとは、ちょっと違ってる。

1本が90ドル。

濃厚なこのワインは、緑色のバターのようなオリーブオイルをかけたパンとサラミで楽しんだ。食が進む!

2001Kurni

まだ十分二若々しくて、でも味の要素がよく溶け合って、エレガント。

どれくらいカルトなんだかと思っていたけれど、ワインは確かに説得力を持っている。そして週に数回だけオープンする奥様がシェフのレストランの予約はなかなかとれなくて大変らしい。

ナパとかソノマのワイナリーのような一見して商業的な感じはなくて、サイズも小さくて、レストランに使われてる部屋もそんなに大きくないし質素。

先祖から受け継いだ土地を大切にして、地中海性気候の中でイタリア人ならではの暮らしをしている。

こういうワイナリーもあるんだね。