カリフォルニアはコロナワクチン接種が進んだことと感染者が減少したことから、ワイナリーのテイスティングルームのオープンが許可になりました。

外出自粛でくすぶっていた気持ちを発散するべく(外出しないからお金も溜まった)「待ってました!」とばかりにワインカントリーを訪れる人がどんと増えています。ほとんどのワイナリー訪問は予約が必要です。人気ワイナリーだと1カ月先まで待たないと予約が取れないワイナリーも珍しくありません。

ワインカントリーでワインの試飲をするというときに二つの試飲スタイルがあります。

一つは昔の習慣が身についている私などが親しんできたスタイル。テイスティングルームに入ると、まっすぐカウンターへ行って、試飲メニューを見てオーダーをして立ったまま試飲をします。試飲が終わると、「じゃあ次へ」ってテイスティングルームをはしごするパターン。

もう一つは、ゆっくり座ってテイスティングルームのサービス担当の方の説明を聞いて、ワインを注いでもらって、じっくりとワインを味わうという、試飲+スペシャルな体験を求めるスタイルです。最近、このタイプの訪問者を受け入れる豪華なセッティングをしたワイナリーが多くなりました。試飲コースによりますが、40ドルから200ドル+と試飲料金は安くありません。

今回は2番目のスペシャル気分を楽しむワイナリーを訪れてみました。

ハメル・ファミリー・ワイン(Hamel Family Wines)というワイナリーです。

ソノマ・ヴァレーにあります。プライベート・エクイティ・ファームを退職したジョージ・ハメルJrが設立したワイナリー。2014年にワイナリーの建築が終わってビジターを受け入れています。ワイナリーの名前通り家族経営のワイナリーで長男のジョージ・ハメルⅢが社長、次男?のジョン・ハメルⅡが醸造家に就任しています。

カリフォルニアワインが世界と肩を並べるようになるまでは、お金持ちはフランスにシャトーを持つというのがパターンでした。今はフランスまで行かなくても、カリフォルニア(ナパ、ソノマ)にワイナリー(シャトー)を持つのも悪くないということなのでしょう。趣味でカリフォルニアにワイナリーを持つお金持ちが珍しくありません。

ハメル・ファミリー・ワイン(Hamel Family Wines)はそんなワイナリーの一つです。我が家から車で15分、ソノマの町から車で20分ほど行ったところの12号線沿いにあります。クラブ会員専用のワイナリーですが、一般訪問者も受け入れています。いつもゲートが閉まっていて、車で通過する度に、いつか行ってみようと思っていました。一カ月前に予約を入れて6月24日に行ってきました。

趣味と言っても、ハメル・ファミリー・ワイン(Hamel Family Wines)は本格的なワイナリ―です。50haという広大な敷地と39haの自社畑を所有しています。オーガニック栽培の認定を受けていて、バイオダイナミック栽培の栽培法も取り入れています。近代設備が揃ったセラーにはコンクリート・タンクとステンレスの発酵タンク(円筒形ではなくて先が細くなっている発酵タンク)がずらりと並んでいます。年間生産量が5000ケースのワイナリーにしては発酵タンク数が多いのに驚きました。

ウルトラモダンな建物の大きなガラスのドアを開いて中へ入ると、壁がすべてガラスのテイスティングルームから自社畑と12号線を超えた向こう側のソノマ・マウンテンが見えます。テイスティングルームのガラス越しの広大な景色を背景に、ワイン・アンバサダー(ソムリエの資格を持っている)のエリック・ドミン(Eric Domin)がさわやかな笑顔で迎えてくれました。

メンバー制でワインの質も価格(?)もサービスも一流のこういったワイナリーは、ソノマ・ヴァレーでは珍しいかと思います。

ワインの販売はクラブの会員が主体という新しいビジネススタイルを取り入れたワイナリーの一つでもあります。

会員は1年に一定数のワインをオーダーする必要がありますが、クリスマスパーティに招かれる、ゲストを同伴してワイナリーを訪れる、ワイナリー専用のシェフがいるのでフード&ワインのマッチング、様々なイベントに参加できる、ゲストハウスに宿泊するとか、いろんな特典を楽しむことができます。日本の方のメンバー大歓迎とのことです。https://hamelfamilywines.com/#wine-club

自社畑のブドウからソーヴィニヨン・ブラン、ジンファンデル、イスミス(ISTHMUS -ボルドーブレンド)、カベルネ・ソーヴィニヨン、ロゼを生産しています。

広々としたテラスでソノマ・マウンテンを眺めながら、心地よい風に吹かれてテイスティングを楽しみました。

2019 Sauvignon Blanc ($48)

ピュアできれいな香り。熟しすぎていないパイナップルに火打石の香りがアクセント。爽やかでフィニッシュが長いエレガントなワイン。

2019 Sauvignon Blanc Reserve ($70)

きれいな香り。ひそやかなオーク樽の香りと味わいがワインに複雑味を加えている。

2018 Zinfandel ($64)

きれいなベリーとジンファンデル香にスパイス(黒コショウ)が重なる。口当たりはソフトで一般的にイメージするジンファンデルより軽い。ピュアなベリーとコショウの長いフィニッシュ。

2017 Isthmus ($90)

カベルネ・ソーヴィニヨン(71%)、メルロー(15%)、カベルネ・フラン(12%)プティ・ヴェルド(2%)のボルドー・ブレンド。カシス、ブラック・フルーツに強すぎないオーク樽の香りがアクセント。ふくよかなボディ。しっかりした骨格というよりはソフトなエッジ。

2015 Nuns Canyon ($200)

最近では珍しいカベルネ・ソーヴィニヨン100%。 コンクリート・タンク発酵の比率が多いとのこと。新樽(100%)で26カ月熟成。ブドウ畑のテロワールが数層に重なる味わいと力強さとなって表現されている。2015年という時代の良くできたワイン。アルコール度がやや高めで、フィニッシュにアルコールの甘さが多少残る。このタイプのカベルネが好みの方にとっては、嬉しいワイン。

2014 Hamel Family Ranch ($200)

カベルネ・ソーヴィニヨン100%。ブラック・フルーツ、カシス、ジューシー、フルボディでしなやか。アルコールの甘さがフィニッシュに少し残る。このタイプの赤ワインが好みの方にとっては申し分のないワイン。

2017 Pamelita RV ($180)

カベルネ・ソーヴィニヨン100%。新しいヴィンテージで、2015年と2014年のカベルネに比べると過熟感がなくて、ソフィスティケート。フィニッシュにこなれたタンニン。ワインのスタイルがを変えたことがうかがわれる。

全体的にどのワインも香り豊かで輪郭がソフトな優しい口当たりのワインという印象を受けました。

コロナで溜まっているストレスを解消してくれる癒し系ワイナリー&ワインかな?

爽やかで豪華な気分が満喫できる、でも押しつけがましさがなくて、ゆったりとしてソノマらしさを感じさせてくれるワイナリーでした。