No.36 ボトルショック

No. 36   Date:2008-09-24

ボトルショック


ワイン業界に働く女性たちで組織されているWomen for WineSenseというグループが主催したボトル・ショックという映画の試写会に出席した。
ソノマとナパのワインカントリーを舞台に、ハリウッド的要素を加えた映画だ。ナパ・ヴァレーのカリストガにあるシャトー・モンテレーナの父親と息子が主人公。1976年にパリで行われたスティーヴン・スプリエー主催のカリフォルニアワインとフランスワインのブラインドテイスティングでシャトー・モンテレーナのシャルドネが白ワインのカテゴリーでブルゴーニュの白を抜いて1位になった話を元にストーリが展開される。
このティスティングのシーンはジョージ・テイバー(唯一このテイスティングに取材に入っていた記者)が書いたThe Judgment of Paris (日本でも訳されて出版されていると聞いた)のテイスティングの場面を借りている。映画でこの記者役でちょっと顔を出しているのはソノマのパートタイムの俳優さん、(内緒だけれどあんまりハンサムじゃない!!)
父親はビル・プルマン(説得力のある演技をする俳優さんですね)、サーファーの息子はクリス・パイン(一緒に行った娘は「キュート、これから人気が出そう」といっていた)。スプリエーはアラン・リックマンが演じている。(実物のスプリエー氏はもっと若いし、イギリス人だから、ちょっとイメージが違うけれど、味のあるワイン商を演じている)
パリのブラインドテイスティングではスタッグス・リープ・ワイン・セラーズのカベルネ・ソーヴィニヨンもフランスのボルドーを抜いてトップになった。でもこの映画ではシャルドネにだけスポットを当てている。ドキュメンタリーではないので、正確に事実に沿っているわけではないからだ。
あっ、この場面はあそこだとか、あのワイナリーだとかいうのが頭にあって、ストーリーは二の次になっていたので、もう一度見なければ、いい映画かどうかは決められない。セバスチアニ・シアターで上映されているので、もう一度見るつもり。
サンタ・バーバラのワインカントリーを舞台にしたサイドウエイという映画が大ヒットしたことは、ご存知だと思う。この映画も試写会に行って見ることが出来た。このときは主役、監督,プロデューサーが出席して、質問を受けていたけれど、ボトル・ショックはソノマに拠点を置くプロデューサーだけが出席。残念ながら俳優さん(特にボー役の俳優さんに会いたかった)は、だれも来ていなかった。サイドウエイの試写会の映画を見た感想は、ワインギーク(ワインお宅)には受けるけれど、一般の人が面白いと思うかどうかとても疑問だと思った。それがなんとすごい話題になって、今でもサンタ・バーバラ・ワインカントリーはツーリストのメッカだし、カリフォルニアのピノ・ノワールは売り切れという現象が起こっている。
それと同じことが起きるかどうか。期待したい。
パリの場面も含めてすべてのシーンがソノマとナパで撮影されている。テイスティングの場面はカンディ(Kunde)というケンウッドにあるワイナリーのブドウ畑にある古い建物だし、シャトー・モンテレーナのワイナリーはブエナビスタ、畑の場面はカーネロス地区、パリの街のシーンはソノマのプラザのコーナーという具合だ。
プロデューサーは日本にもこの映画を売る交渉中と言っていたから、日本でも上映される日が遠くないだろう。
あるパーティでハイジーとボーに会った。映画の話になって、会話が弾んだ。映画に出てくるブロンド美人のインターンはハイジーのイメージととても似ているけれど、彼女いわく、そのころ、彼女はボーとはまだ付き合っていなかったといっていた。実際のボーは今でもハンサムだ。ボーのお母さんは「もっと彼女が出るシーンが多かったらよかったわ」といってたそうで、ほほえましい。映画ではボーがパリのテイスティングに出席しているけれど、実際にはボーはパリのテイスティングに参加していなかったという。
シャルドネの色が濃い黄金色?(だと思った)になってしまったことから映画の題名が「ボトルショック」となっているのだけれど、実際には黄金色になったことはないと、シャトーモントレーナのシャルドネを造った人物、ガーギッジ氏は言っているそうだ。映画の中ではメキシコ系の醸造アシスタント、グスタヴォ・ブランビラがガーギッジ氏の代わりに登場するけれど、ガーギッジ氏は出てこない。シャトー・モンテレーナの名前が有名になって、このシャルドネはガーギッジ氏が造ったということがかすんでしまったのか、当時のオーナーであったジム・バーレット氏が意図的にしたのかはわからないけれど、今でも仲が悪いらしい。
この映画では最後に名前しか出てこなかったけれど、このテイスティングでトップになったカベルネ・ソーヴィニヨンを造ったワイナリー、スタッグス・リープ・ワイン・セラーズは売られてオーナーが変わった。シャトー・モンテレーナもブラインドテイスティングに出てくるフランスのシャトー・コス・デストゥルネルに買い取られてしまった。皮肉というか運命的というか、時代の流れを感じる。