No.44 プリミエール・オークション2010

No. 44   Date:2010-3-03

プリミエール・オークション2010
毎年2月にワイン関係業者を招待して行われる樽で熟成中のワインのオークションが2月18,19,20日に開催された。
18日はワイナリーがお客を招いてのパーティ。19日はCIAのワインセンターでの試飲、ワイナリーや、地区ごとのテイスティングがナパ・ヴァレーのあちこちで開かれる。そして20日は朝から2008年の樽に入ったワインの試飲の後、オークション。年々、このイベントは派手になってきている。なんせ、ナパなのだから。
19日に、出来る限りのワインテイスティングをしている箇所を回った。でも予定していたテイスティングの4箇所をこなしたけれど残りの2箇所は体力不足で回りきれなかった。
19日、まず朝はCIAのワインクラスを会場に行われたブラインドのテイスティング。今年は12のワイナリーの2006年、7年、8年と3ヴィンテージのシャルドネとカベルネのテイスティング。
入り口で番号とヴィンテージだけが書かれた紙を渡される。参加ワイナリーのリストはテイスティングを全部終えた段階で渡してくれるというシステム。
自分の味覚を確認するいい機会で、ブラインドだと、どんなワインをどんな風に評価するのかなあとわくわく。
結果は当たっているのと、驚きと両方だった。全体的にこれだ!というワインの出展は少なかった。その中で、シャルドネではベリンジャーのプライベート・リザーヴ、それからキーナン、シャーファーがいいと思った。シンプルだけれど美味しいと思ったのがルサフォード・ヒルで、ワイナリーの名前を見てわれながら驚いた。リーズナブルな値段なら、今度買ってみるつもり。
カベルネはエチュードとサマー・エステート、テラ・ヴァレンタインがよかった。
いつもラベルを見ていいと思って飲んでいたワインが、ブラインドで低い評価をつけていたので、われながら驚いた。それがシャルドネとカベルネにひとつずつあった。

2008年のオークションロットの樽からの試飲で思ったこと。
2008年は出来のよい年ではあるけれど偉大なヴィンテージではないというのが私の全体的な印象。もちろん、素晴らしいワインに仕上がっているワインもあったけれど、その数が少なかった。悪いワインというのはもちろんなくて、偉大なワインになるかどうかと、醸造家ではない私が予測しているというだけのことなのだけれど。
どの赤ワインにも共通していたのが口当たりだ。軽やかで滑らかでしなやか、メモにはソフト、シルキーと書いたのが多かった。
ヴィンテージの特質なのか、それともパワーのあるワインから、エレガントなワインへと方向を転換したせいなか、その両方なのか、ソフトなのだけれど骨格が感じられるワインが少なかった。
エレガントでニュアンスが感じられるワインを造るのは、凝縮した濃いワインを造るよりもっと難しいのではないだろうか。ぜんざいは、こってりしていて甘さとコクで私は味わうけれど、お汁粉なら甘味、塩加減、汁の美味しさなどもっといろんな味を感じる。ワインも同じで、シンプルな軽いワインを造ることはできても、エレガントでニュアンスがきれいに出たワインを造ろうとしたら、原料である素晴らしいブドウが育つ畑で、その畑の特質を良く知っていなければ造ることができないのではないかしら。これから、このトレンドにあわせて、濃いワインからエレガントタイプへと、どのワイナリーもタイプをコピーしていくのだろう。そのときに、質の差が濃いワインよりもっとはっきりと出ると思う。
2008年の樽から試飲したナパのカベルネの多くが「華やかなブロンドの若い女の子」のイメージ。「この子はきれいな女性になるのだろうな、でも教養が備わった凜とした気品と深みのある大人の女性になるかどうかは、確信がないなあ」という感じのワインが多かった。相棒を含む他の醸造家は、私とは意見が異なっていた。3年5年10年後と待って飲んでみるしかない。
愉快だったのはラテン系の二人の女性が「カベルネがすごく多いわね」と言っていたことだ。ナパっていうとカベルネの世界だっていうのを知らないでやってきたのかしら。愉快だよね。