No.48 ワインマーケットの希望の星,その他

No. 48   Date:2011-1-15

ワインマーケットの希望の星

消費者にとってグッドニュース

LOKOYAのマーケティング戦略

レストラン業界のワイン価格設定

 

 

ワインマーケットの希望の星

この不景気の中でワインマーケットにおける希望の星は中国のようだ。有名シャトーのワインが香港と中国本土で鼻血が出るほどの高価格で、確実に売れているという。オスピス・ド・ボーヌのオークションのカタログが中国語で初発行され、このイベントの前の試飲会を中国で開催。中国人にブルゴーニュのワインをボルドーと同じように注目してもらうことを期待している。昔の日本のワイン市場を思い出すのは私だけ?

東京の友人が「次はナパのオークションのパンフレットが中国語で出るんじゃないの?」とジョーク。

 

消費者にとってグッドニュース

アメリカ国内の小売価格が30から100ドルのワインは、いまだに苦戦。特にセントラル・コーストのシラー、オレゴンのピノ・ノワールの小売価格が下がっているのが目に付く。

しかし高額ワインは売り上げがゆっくりでも、イメージがダウンするのを恐れて価格を落とすのを躊躇している。そのため高額ワインの生産量を少なくして、同質のワインをフレンドリー価格のワインに使っている。これは消費者にとってグッドニュースだ。消費者として、ワインの価格と質に注意を注いでいたら、質の良いワインをフレンドリー価格で買い求めることが出来る。

地元にあるソノマ・ワインカン・パニーは近代的醸造設備を備え、バルクワインを買って数種類のブランド名でワインを生産するワイン会社だ。醸造担当者と話す機会があった。小売9ドル前後のマークウエストというラベルのピノ・ノワールは2010年は65万ケース生産、来年は80万ケース生産予定と好調で笑いが止まらないという感じだった。また同社のアヴァロン(ナパ・ヴァレー)というラベルのカベルネ(小売12ドル)は10万ケース生産。ピノ・ノワールのバルクワインは主にパソロブレス、ナパ・ヴァレーのカベルネは「高級ワイナリーの例えばルサフォードとかハウエル・マウンテンのカベルネがバルクで手に入るからいいのが出来てるよ」とにっこり。

 

LOKOYAのマーケティング戦略

先日、数年ぶりにナパ・ヴァレーの超高額ワインのひとつ、LOKOYAへ行って、2007年の3つのワイン(ハウエル・マウンテン、スプリング・マウンテン、マウント・ヴィーダ)をテイスティングする機会があった。3つのワインともしっかり熟したブドウから造られたバランスのいい、こなれたタンニンがたっぷりの長熟にも耐えるすばらしいワインであることに変わりがなかった。

驚いたのはこの不景気の中で小売価格を1本400ドルに値上げをしたということだ。生産量を少なくして価格を上げるという戦略のプレミアムワイナリーもあるということなのだろう。

 

レストラン業界のワイン価格設定

アメリカの経済状態はやや良くなったといわれているけれど、まだまだ失業率は高い。サンフランシスコ、南カリフォルニア、シリコン・ヴァレーのレストランのワイン売上げ額が多少増加しているという報告が出ている。

しかし多くのレストランが、持ち込み料サービスの日やワイン半額の日を設定するという今までの販売促進に頼るのではなく、新しい案を模索している。

お客さんは良く知っているブランドのものをオーダーする。新しいワイナリーのワインは、よく知らないということで敬遠する傾向にある。

その反面、レストランは小売店では手に入らないワインをリストに載せる必要性を強く感じている。小売店で買ったときの価格とレストランの価格を比較できない小さなワイナリー、あるいはレストランにしか出していないワインを選んでワインリストに載せる。不景気の中でワイン消費者は賢くなって、ワインショップで売られているワインの価格を良く知っているということをレストランが認識しているからだ。

ワインショップで買ったワインをレストランでもオーダーしようとして、マークアップの高さに憮然とした経験をお持ちの方が少なくないと思う。グラス売りで1杯が8ドル、同じワインがワインショップでは1本が10ドルというのは避けたほうがレストランとしては賢い。

ディストリビューターにレストランで出すワインは近距離圏内の小売店で売っていないワインを持ってくるようにというリクエストをするレストランが増えているという。

ワインによっては小売店で大幅にデスカウントされていて、その価格をインターネットで大いに吹聴していたりすると、そのワイン自体の本来の価値が低められてしまうケースも見られる。レストランがそういうワインをリストに載せるのを避けるのは、まあ、常識ですよね。

某レストランのオーナーは、ワイン販売成功のポイントを次のように説明する。小売店での価格が安定しているもの、あるいは小売店では手に入らないワインを選ぶこと。それから大手のワインは避けること。ワイン消費者はそういうワインはよく知っているので、レストランでは冒険をしてみたいというお客さんの要求に応えて、ユニークでどこでも手に入るということがないワインも揃えること。

レストラン関係者はバブル時代のような好景気に戻ることはないから、そのころのように適性価格を超えたマークアップをすることはやめるのが賢明。

またデスカウントは前の価格を知っている期間だけ高価がある。そのデスカウントが通常価格となったときにはその価格が基準価格となるから、もはやデスカウント感はなくなってしまう。

2011年はどんなワイン市場になるのだろうか。これだ!というようなユニークな販売促進のアイデアを企画するレストランが登場することを期待したい。